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Home ニュース ニュース特集 原発の海外向けプラント輸出が始動!!
原発の海外向けプラント輸出が始動!! 印刷
2010年 10月 15日(金曜日) 12:43
  9月14日、米カリフォルニア州で計画中の新幹線建設のため、アーノルド・シュワルツェネッガー知事がJR東日本の最新型新幹線「E5系」に試乗したことが話題になった。現在、日本政府は新幹線をはじめとして、海外でのインフラ開発の受注を取ろうと意欲を燃やしている。そこで、今号では日本の技術力が詰め込まれた原発プロジェクトの可能性とそれを下支えする中小企業についてレポートする。

海外展開が盛んになる 日本のインフラ技術

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柏崎刈羽原子発電所(新潟県柏崎市)

前原誠司前国土交通大臣(現・外務大臣)は「ふるさとテレビ月例セミナー」で「新幹線や原子力発電所などのインフラ技術の海外展開を官民一体で取り組んでいきたい」と話していた。この発言の通り、7月には経済産業省と東京電力、関西電力、中部電力などの電力会社、日立製作所製作所、東芝、三菱重工業業などの大手メーカーが官民共同で原子力発電所海外展開の新会社を設立することを発表し、設立準備をすすめているという。

このプロジェクトの狙いは「オールジャパン」としての結束力を高めていくことだが、その背景には昨年末の国際入札での一件があった。アラブ首長国連邦での原発プロジェクトで、韓国に競り負けたことがこのプロジェクト結成に。このときの入札にはフランスやアメリカなども参加していたが、韓国以外はまとまりに欠け、かつ金額面でも相当な開きがあったといわれている。

東京電力国際部の小島英夫氏は「原発はプラント1基で4000億円というビッグプロジェクト。これだけの規模のものは官民一体でないと不可能に近い。そういう意味では、今度の新会社は大きな前進といえます。まずは、ベトナムで予定されている原発プロジェクトを受注しようと意気込んでいます」と話している。

こうした政府の動きについて、(社)日本原子力産業協会の石塚昶雄常務理事は「かつては国内の電力供給が第一だったということもありますが、途上国における安全面などの懸念から、原発の海外展開は大きな壁がありました。私たちが東南アジアに連絡事務所を開くだけでも大変なことでした。それを考えれば今の状況は、夢のような出来事です」と話す。 では、日本の原発は何をウリにできるのか。経済産業省原子力政策課長の三又裕生氏は「日本が世界にPRできるのは、なんといっても安全性です。スリーマイル島事故(79年、米)やチェルノブイリ事故(86年、旧ソ)以降、世界的に原発は『冬の時代』を迎えましたが、日本は着々と開発をつづけてきました。唯一の被爆国ということもあり世論も厳しかったのですが、それが世界に類を見ないほどの高い安全性を実現したのです」と分析する。 さらに日本の原発は耐震性においても高い評価を得ている。たとえば、07年の新潟県中越沖地震の際、柏崎刈羽原発では「止める、冷やす、閉じ込める」という安全機能が働いて自動停止したことで、IAEA(国際原子力機関)から評価された。その安全性の高さはデータにもハッキリと表れている。別表のとおり、91年から08年まで世界の原発におけるトラブルは約120件も発生しているが、日本ではレベル2が1件のみということからも明らかだ。

日本のモノづくりに 期待感が高まる

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建設中の島根原子力発電所

温室効果ガスの削減、原油価格高騰への対応、化石燃料の依存脱却という潮流もあり、日本の原発セールスが活発化するのは間違いなさそうだ。しかも、日本の原発技術は世界屈指であり、大きな可能性を秘めている。また、原発を世界に売り込むことができれば、三菱重工業、日立製作所、東芝といった原発プラントメーカーを支える約3000~5000社に上るサプライチェーン(支援技術群)の底上げにもなると期待がかかっている。

原発はバネからナット、バルブに至るまで、安全性を重視した特殊な部材で構成されている。そして、それに関わる企業は日本製鋼所(東京都品川区)や岡野バルブ製造(福岡県北九州市)のような上場企業から、社員数名の中小企業まで非常に裾野が広い(別表参照)。 なかでも北海道室蘭市で原子炉容器などを生産する日本製鋼所は、世界で唯一、原子炉容器の中核部から単一の鋼塊をくり抜いて、放射能漏れの恐れが少ない炉を製造することができる企業だ。その技術力ゆえに、世界中の原発メーカーからの受注が相次いでいるという。

社員45名のハードロック工業(大阪府東大阪市)も原発建設にはなくてはならぬ企業だ。主力商品は緩み止めナット「ハードロックナット」。これは凹凸形状のダブルナット構造で、凸ナットの突起部を若干編心加工させることで、ボルトとナットのスキ間にクサビを打ち込んだ状態にし、ねじの緩みを防止することができるというもの。企画部の林雅彦氏は「原子力施設には、主にステンレス鋼、軟鋼、熱処理鋼などが使われます。市販品と異なり、全数検査を実施し、材料証明書や検査証明書を添付します」と。同社の売上高は現在、年間12億円だが「3年後に20億円にするのが目標。海外の原発メーカーにもPRし、輸出の割合を現在の1割から3年後には3割まで高めたい」と意欲的だ。

ただ、サプライチェーンを形成している中堅・中小企業は二極化しているといわれている。一方はビジネスを拡大できると判断し、海外進出にも積極的な企業。もう一方は継続的に利益を得ることが難しい上に、仕様が厳格でリスクも大きいのでやめたいという企業に分れる。日本政府や大手プラントメーカーは後者のような企業への配慮も十分に行っていく必要があるのではないだろうか。

ところで、原発の海外展開では後発の日本勢だが、三菱重工業や日立製作所、東芝といったプラントメーカーは、海外の原発メーカーを買収・提携することで力をつけている。とくに東芝によるウェスティングハウス(WH)社の買収(06年)は大きな出来事だった。WH社は加圧水型原子炉(PWR)の世界的メーカーであるため、PWRが主流の欧州市場への展開が期待できるようになったのだ。

そのほか、日立製作所は米ゼネラル・エレクトリック(GE)とともに合弁会社「日立製作所GEニュークリア・エナジー」を設立し、2023年までに英国に原発を新設するプランを立てている。一方、三菱重工業は仏アレバ社と提携を結んでいる。

また、東京電力は米国が初めて改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を採用する「サウステキサスプロジェクト原子力発電所3・4号機増設プロジェクト」に最大250億円の出資参画を発表している。日本の電力会社としては初めて、海外における原発事業へ出資参画することになった。このように原発の海外展開に向けた取り組みは、すでに始まっているのである。

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クサビの原理を応用し、強い緩み止め効果を発揮する「ハードロックナット」

巨大な中国市場への期待

日本政府は当面はベトナム原発の受注に注力するとのことだが、中国における原発プロジェクトについても興味を示しているようだ。なんといっても、中国では市場規模が巨大だからだ。前出の三又氏は「中国の原発は運転中のものが11基、建設中が18基あります。急速に伸びる電力需要と世界的なCO2削減の流れから、これから中国政府は100基以上の建設を目指していくといわれています。現在の設備容量は9GWですが、2025年には189GWにまで拡大する見通しで、2030年には米国の規模を抜いている可能性があります」と話す。

 また、前出の石塚氏は「中国の技術水準は十分に高くなっている。5段階評価ならレベル4に達しているのではないか」と。ただ、急速に原発を増設した場合、関連する法整備、人材と安全性を継続して確保できるかといった課題も出てくるので、注意しなければならない。

 なお、中国政府は原発に関して、段階的国産化を志向しており、プラント全体を海外メーカーに発注する可能性は低いという。それでも部材輸出だけでも相当の規模があるため、日本の中小企業にも大いにチャンスがあるのではないだろうか。

 東京電力でも「海外展開を事業の柱に置くビジョンを発表したばかり。中国においては今年度中に北京事務所を設立し、情報収集や現地高官との調整などをはかっていく」(前出・小島氏)と話している。

 中国はとくに人脈を重視する国である。中央政府から地方政府に至るまで、顔なじみになって情報交換することから始めるのが大事ではないだろうか。

 原子炉の種類

 原子炉は大きく分類して、沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)に分けられる。BWRは米ゼネラルエレクトリック(GE)の技術を導入した東芝と日立製作所で製造されており、PWRは米ウェスティングハウス(WH)の技術を導入した三菱重工業で製造されている。しかし、06年に東芝がウェスティングハウスを買収したことで業界再編がすすんでいる。なお、世界的にはPWRの新規建設が目立っているようだ。

 

最終更新 2010年 10月 26日(火曜日) 17:04