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Home ニュース TOHO-Daily 北限のみかん農家
北限のみかん農家 印刷
2011年 1月 05日(水曜日) 14:17

栃木県那須烏山市の小木須集落は、知る人ぞ知る北限のみかん産地だ。しかも、そのみかんは市場に流通しておらず、入手するには山の斜面にある7軒の観光農園を訪れるしかない。そのため、11月~12月上旬のみかん狩りのシーズンになると、県外からも団体客や個人客が訪れる。

というわけで、この地で先祖代々、農業を営んでいる国見観光みかん園を訪ねた。園主の小林和男によると「この集落では昔から『福来みかん』や『柚香』といったみかんが自生していた。柚香は酸味がキツイ品種だが、それでも子どもの頃はよくもいで食べていた」という。 

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「"北限のみかん"には昔ながらの酸味が残っている」と話す小林和男

 それにしても、一般的には温暖な地域で栽培されるみかんが、どうして北関東の山間地で栽培されるようになったのか。「かつてこの一帯はタバコや大麦、小麦の産地だったが、時代の変化とともにその需要は激減した。しかも、山間地だから機械を入れるような農業もできないし、高齢化もすすんだ。そこで、あまり手がかからない果樹栽培にチャレンジしてみることになった」そうだ。そして「福来みかんや柚香が自生しているのであれば、一般的な温州みかんも栽培できるのではないか」ということで、45年ほど前から本格的にみかん栽培を始めたという。

 産地になるまでの道のりはけっして平坦なものではなかった。「当初は陽当たりと水ハケがいい所に木を植えていたが、どうしてもすぐに枯れてしまう畑があった。そして、色々と検証しているうちに、そこは少しだけ谷間になっており、風通しが悪いことがわかった。そうやって徐々にみかん栽培に適した場所を決めていった」そうだ。 

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みかんの様子をチェックする和男。「畑で採ったみかんは4、5日経つと、酸味が和らいで食べやすくなる」と話す

もちろん、みかんの木のメンテナンスにも注意を払わなければならない。たとえば「みかんの木の天敵はカビとそうか病。これらをマメに取り除かなければならない」という。そうか病とは細菌などが実のなかに入り込み、表面にかさぶた状の病斑が生じる症状のこと。こうした病害に対しては農薬を使用せざるをえないが、「経験を積むにしたがって、春先に一度だけ農薬を使えばいいということがわかってきた。おかげで、今ではほぼ無農薬で栽培することに成功している」という。

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 また、みかんの木の植え替えも重要な仕事のひとつだ。「みかんの木の寿命は大体40年くらいだといわれている。寿命が近づくと、カビが生えやすくなったり、枝が腐れやすくなったりする。そうなってきたら、新しい苗木を植えて、時間をかけて育てていかなければならない」と。ちなみに「若い頃のみかんは酸味が強すぎるが、大体10年くらい経てば、ほど良い酸味のみかんを収穫できるようになる」そうだ。

こうした悪戦苦闘の末、ついに蕫北限のみかん﨟ができあがった。そして、念願の顧客もつくようになった。では、肝心の味はどうか。「市場に出回っているみかんの多くは、温暖化の影響で水分と甘みが多くなり、みかん本来の酸味がなくなってしまった。だが、このあたりのみかんには、昔ながらの酸味が残っている。そのあたりが評価されているのではないか」とその出来栄えに満足気だ。 

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しかし、今年は例年の半分ほどしか実らなかった。「春先が寒く夏には雨が降らなかったため、みかんがあまり実らなかった。気候ばかりはどうしようもない」と和男は嘆く。気候に左右される農家の暮らしは、後継者問題にも影を落としており、小木須のみかん農家の大半がこの後継者問題に頭を悩ませている。「子どもたちが小木須に戻ってくるとはかぎらないが、蕫北限のみかん﨟を守るには、細々とでも生産をつづけなくてはならない」と和男は話す。間もなく正月、那須烏山が誇る蕫北限のみかん﨟を鏡餅の上に載せてみるのもオツかもしれない。
最終更新 2011年 1月 05日(水曜日) 14:31